大和当帰

大和当帰について

About YamatoTouki

大和当帰の特徴

根は薬、葉は食す

大和当帰(やまととうき)とは、セリ科の多年生植物で、奈良県に大変ゆかりのある薬草です。主に根の部分が生薬として、婦人科系の漢方薬に利用され、血を補ったり、血の巡りや冷えの改善などに用いられます。女性の健康を支える有名な薬草です。
漢方薬の例:当帰芍薬散、四物湯など

葉は、2012年(平成24年)に食薬区分から「非医(医薬品ではない)」扱いとなり、食すことができるようになりました。セロリのような香りが特徴的で、脂身の多い肉や鶏肉との相性が合います。生でハーブのようにサラダとして利用したり、おひたしや天ぷらなど和食とも合います。ポニーの里ファームでは、生葉での販売や、乾燥した葉をハーブソルトやハーブティーに加工しています。

「当帰」とつく植物はホッカイトウキ(主に北海道)、カラトウキ(主に中国)、ヨーロッパではアンジャリカという名で浸透しています。しかし、薬効成分が高く、品質のよいものは「大和当帰」と言われており、昔から大変重宝していたようです。

大和当帰葉栽培が比較的難しく、奈良県や和歌山の一部でしか栽培されていませんでしたが、現在栽培拡大に向けて奈良県全体をあげて取り組んでいます。弊社も参画している取り組みの一つに『奈良県漢方のメッカ推進プロジェクト』があります。2012年(平成24年)に発足し、行政、生産者、大学、製薬会社やその他民間企業が連携をとり、大和当帰の栽培や活用を広げるために力を入れています。

大和当帰を使った料理写真

大和当帰ができるまで

大和当帰の栽培は大変難しく、弊社も試行錯誤をしながら栽培に取り組んでいます。最近では夏の猛暑や日照不足など天候不順による影響もあり、栽培がより困難になりつつあります。しかし、昔から人々の健康支えてきた植物だからこそ、また求める人たちのために栽培を続けています。

【1】大和当帰の苗づくり

大和当帰の種蒔きの時期は毎年4月上旬の春の初めに行います。畑にしっかり肥料を撒き、畝を立て、種が飛ばないようにもみ殻を撒き、板などでしっかりと抑えます。発芽までは20日くらいです。そこから約1年間水やりや除草作業など行い、管理していきます。苗づくりに約1年かかります。
より育苗管理する期間を短くするため、ハウス内に育苗ベッドをつくり、秋頃(9月末~10月中旬)に種蒔きを行い、約半年で苗をつくる技術を習得しました。

大和当帰ができるまで_種
大和当帰ができるまで_苗

【2】圃場への定植作業

苗ができると次は畑での定植作業です。3月下旬から4月上旬のまだ少し肌寒い時期に、苗床から一本ずつ根を切らないように掘り上げ、しっかり土づくりをした畑に一本ずつ手作業で植えつけていきます。根っこが大きく成長すればするほど、葉もたくさん茂ります。根をより大きくするために斜め45度の角度で植えつけます。ちょっとした工夫ひとつで生育が変わります。定植後、しっかりと水をやり、猛暑などで土が乾き、枯れないようにすることが大切です。逆に水がたまりすぎると根腐れを起こし、枯れてしまいます。とてもナイーブな植物です。

大和当帰の圃場への定植作業_植え付け
大和当帰の圃場への定植作業_畑

【3】種採り作業

弊社は大和当帰の種を自家採取し、次の年へとつないでいます。大和当帰は夏頃に真っ白な花を咲かせます。よくみると花の中に小さな粒が見え、熟していくと玄米よりひとまわり大きい粒ができます。花を手で揺らすとパラパラと落ちるくらいまで置いておき、頃合いを見て採取します。採取したものは軽くゴミを飛ばし、冷凍して次の種蒔きの時期まで保管します。ちなみに、大和当帰は花が咲くと、根っこからの養分はすべて種にいくため、根っこは枯れてしまい、生薬としての利用はできません。

大和当帰の種採り作業_花
大和当帰の種採り作業_種

【4】害虫との戦い

大和当帰をおいしいと思うのは人間だけなく、虫たちも同じです。大和当帰には多くの虫が寄ってきます。代表的なものがキアゲハの幼虫です。香りの強い大和当帰の葉を好み、アゲハ蝶が卵を産み付け、ほっておくとあっという間に広がり、幼虫が大きくなればなるほど被害が大きくなります。最近は大和当帰に使える農薬の登録も増えましたが、弊社は食の安全を考え、農薬を使わずに栽培するためすべて手作業で害虫駆除を行います。同じように株間の草引きも除草剤を使わずに手作業で行うため大変な労力がかかっています。

大和当帰の害虫との戦い

【5】葉と根の収穫

大和当帰は葉と根の収穫が可能です。葉は定植した年の秋頃に初めての収穫が可能です。緑色のギザギザした葉が茂っているので、手作業で摘み取ります。収穫時は大和当帰の香りがして、すてきな香りに包まれて作業ができます。その後葉は、定植の翌年の5月頃から10月末頃まで収穫できます。冬時期(11月から3月頃)は、一度葉が枯れるため収穫できません。根っこを収穫するまで、あるいは枯れるまでは採取可能です。定植後、約2年間は葉の収穫は可能です。
一方根っこは掘り上げてしまうため一度の栽培で1回だけです。定植後2年目の冬(12月から1月)にスコップなどで根っこを傷つけないようにして掘り上げます。掘り上げた後は、生薬として利用するために陰干しを行います。根っこはより大きい方がいいので、栽培期間をできるだけ長い方がよいです。また葉を収穫すると、その分光合成する量が減り、根っこも小さくなります。

大和当帰の葉と根の収穫_葉
大和当帰の葉と根の収穫_根

【6】出荷調整作業

弊社が葉を利用する際は、きちんと選別作業を行います。できるだけ大和当帰葉の色の濃く、つやのあるものを食品利用します。それ以外のものは入浴用や草木染めなど食以外の商品に用います。
根は昔から掘り上げたあと、2月末くらいまで陰干しを行い、その後湯もみ作業を行います。土を落とし、残っていた地上部を切って、60℃の湯に2分程度漬けて、やわらかくし、40℃~45℃の湯に浸し、1~2分ほどもみ洗いして、水ですすぎます。その後、棚などに置いて乾燥させます。しっかり乾燥させてから4月末ごろにやっと出荷となります。湯もみ作業は大変時間のかかる作業ですが、この作業を行う事で代謝を高め有効成分がより高くなるといわれています。

大和当帰の出荷調整作業_湯もみ
大和当帰の出荷調整作業_湯もみ